ウツボよおどれ

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パイレートマン仮説を用いた火事場のクソ力考察

 

 

 

火事場のクソ力には3段階のパワーがある。


1段階目、自分が勝つためだけに出した力。
2段階目、仲間を想う気持ちで出した力。
3段階目、対戦相手を思いやる気持ちで出した力。


これを初めて口から出したパイレートマンに倣って、パイレートマン仮説と呼ぼうと思う(これ、言ってみたかっただけ)。
どうしてパイレートマンがここまでこの力に詳しいのかはわからないが、とりあえず3段階目のクソ力を解放すると、わずか95万パワーのキン肉マンが8000万パワーのパイレートマンに完璧に極められた状態から即座に抜け出せるレベルになる。

 

2世世界においては、無我・友情・寛容の3つの力によって得られる力だったりして実に設定があやふやなのだが、新章においてはこのパイレートマン仮説をしっかりと貫いていると言ってもいいだろう。


1段階目と2段階目はどの超人でも達することができる領域だと思うが、3段階目になると達した超人の数はだいぶ限られる。
とりあえずざっと読み返して、新章において重要そうなクソ力開放シーンを見てみようと思う。

 

ロビンマスクVSネメシス

 

 そしてそんな過去を経てきた私だからこそ おまえのようなヤツに負けられない
 決して沈めない理由があるのだ――っ!

 

 またもや…この力…!

 

 おまえのようなヤツの前だからこそ私は絶対に沈むわけにはいかない!

 

 また消えた…

 

 キン肉マン 第44巻、ゆでたまご集英社、2013、p126-127


ネメシス戦において、ロビンマスクはネメシスドライバーから立ち上がる時と、バトルシップ・シンクから立ち上がる時の2回、クソ力を発揮している。
しかし、どちらも立ち上がった直後に消えてしまっているし、ロビン本人自体はネメシスにとてもあっさりとやられてしまっている。
全体的にロビンの言動は、過去の自分と比較しての清々しい怒りと、友情のすばらしさを知ってもらいたい気持ちに満ちていて、ネメシスとは深く向き合っていない(ネメシス戦でのラーメンマンにも同じことが言える)。
この時のクソ力はせいぜい2段階目くらいだろう。

 

 

ウォーズマンVSポーラマン

 

 ようやく目が覚めたぜ
 今までオレはロビンの恩に報いようとするあまり 自分の命を捨てるつもりで闘っていた!
 だが己の命を粗末にする者は 相手の命も粗末に考えがちになる
 だがそれじゃあただの殺し合いだ!

 

 ウォーズマン

 

 しかしロビンはこんなオレに生きろと言った!
 血肉の通った超人であることに誇りを持てと言ってくれた!
 だからオレはもう死ぬために闘わない!
 生きるために…ロビンがオレに託してくれた大事な命を守るために闘う!
 大切な命を守るために……
 そしてその命の中にはポーラマン おまえの命も含まれているということだ

 

 キン肉マン 第45巻、ゆでたまご集英社、2014、p81-82

 
ウォーズマンはポーラマン相手に奮闘していたものの、ほとんど相手になっていなかった。
ロビンマスクの死を通し、相手であるポーラマンをも守るという気持ちで戦ってもなお劣勢だったが、仲間や観客の声援を受けてスーパー友情モードに達している。
肉体が機能停止+ポーラマンの巨体に押し潰された状態から、タワーブリッジ・ネイキッドで飛び上がったこと、さらに一度パロ・スペシャルから腕が外れた状態からも再度極め直し、圧倒していることを考えると、この状態のウォーズマンは3段階目のクソ力に達しているのではないかと思われる。
相手が始祖や六鎗客ではなく、一歩劣る完璧・無量大数軍なので目立たないが、一早く3段階目のクソ力に達していたのがウォーズマンじゃないだろうか。
ところで、123ページのラーメンマンの意味深な沈黙は何?

 

 

 

●スニゲーターVSガンマン
●ザ・ニンジャVSカラスマン
アシュラマンVSジャスティスマン

 

いずれも全身が発光している描写があるのでクソ力なのは確定。
スニゲーターはスプリングマンとステカセキング、ザ・ニンジャは血盟軍、アシュラマンは同胞たちへの想いから2段階目に達していたかと思われる。
また、ニンジャのクソ力は早贄刺しから逃れる時だけの発動なので、ほんの一時的なものだったと思われる。
いずれにせよ、悪魔超人に相手を思いやることはできないのだから、どう足掻いても2段階目までが限界だと思われる。

 

 

 

バッファローマンVSガンマン

 

バッファローマンもまたクソ力3段階目に達していると思う。

ガンマン戦において、序盤戦の純粋な悪魔超人のバッファローマンはほとんど相手になっていなかった。
悪魔将軍の命を受けて、ラスト3分間のフェア精神を持った正義超人に戻りつつある際のバッファローマンは全身が発光こそしていたが、ガンマンにはまったく敵わず、あっさりと片方の角を折られてしまう。
この状態のバッファローマンは戦いを楽しむ自分のためだけに闘っている1段階目か、正義超人としてキン肉マンたちとの間に友情を感じている2段階目か、正直よくわからない。
ただ、パワーの最大値が上がってきているという台詞から、おそらくは2段階目相当のパワーが出ているようには思う。

 

 なぜ その”真眼”であの武道…
 いや超人閻魔を見ようとしない?

 

 キン肉マン 第52巻、ゆでたまご集英社、2015、p106

 

 アンタ 実はいいヤツだ だからこそ今すぐ見てほしい
 あそこで見ている…
 あいつをその眼で!

 

 キン肉マン 第52巻、ゆでたまご集英社、2015、p108

 

それを踏まえてのこの台詞だが、ここでバッファローマンはガンマンがガンマン自身に嘘をついていることに気づく。
決して出まかせの言葉や騙そうとしての発言ではなくて、純粋に闘いを楽しみたいという気持ちから出てきた言葉……だと自分は思っている。
億単位の年月の間、自分に嘘をつき続けてきたガンマンを救うため、この時のバッファローマンは3段階目に至り、ガンマンを真っ向から撃破したと思われる。

 


キン肉マンVSネメシス


バスター合戦の時にお互い2段階目。
ネメシスのスパーク返しの時には、同胞を思う気持ちからネメシスが2段階目。
最後のマッスル・スパークの際、ネメシスを救いたいという思いでキン肉マンが3段階目に達していたはず。
悪魔超人と同様に、完璧超人も3段階目に達するのは難しいか。

 

 

●悪魔将軍VSストロング・ザ・武道


わざわざ言及するまでもないと思うけども……
消滅していった始祖たちの念と、師を超えるという約束のためだけに発言したロンズデーライトパワーは3段階目のクソ力相当のパワーだろう。

 

 

●ベンキマンVSギヤマスター


死んでいった仲間の無念のため、ベンキマンは2段階目のクソ力に達成。
あんまりカナディアンマンティーパックマンと絡みとかなさそうなのに、ずいぶんと仲間思いな超人。見直した(何様?)

 

 

●ウルフマンVSルナイト


お互い2段階目のクソ力か。
最後のやりとりを見るに3段階目の片鱗は見えていたと思うけども、残念。

 


フルメタルジャケッツ(キン肉アタル&ブロッケンJr.)VSオメガ・グロリアス(オメガマン・アリステラ&マリキータマン)

 

呪いに支配されるアリステラのクソ力は2段階目が限度なのに対し、アリステラに自分を重ねて見ることのできたブロッケンJr.が3段階目に達したのは明白。

それよりもどうしても気になってくるのは、業火のクソ力=火事場のクソ力なのか問題。
業火≠火事場なのか、業火≒火事場なのか、作中ではよくわからない。
特に奮起や仲間との友情を特別見せなくとも、「業火のクソ力~!」ってグッと言えばそれだけで発現しそうなパワーな気がする。

 

 お前がもはや自分で引けないのはわかっている
 それが宿命だと自分に言い聞かせている だが自分の間違いにも気付いている
 お前は決してバカではない その板挟みの中でもがき苦しんでいる
 そんなお前を救う道は…
 倒すこと以外にないとオレは心得た
 だから今ここに
 オレは…立っている

 

 キン肉マン 第71巻、ゆでたまご集英社、2020、p108

 

 アリステラよ 私はできることなら この世の誰とも仲良くしたいと思っている
 お前とだって闘わずに済むなら手を取り合い 未曽有の危機を迎えているというオメガの星だって 一緒に救う道を考えていきたい
 だが しかし…今のお前と手を組むことは…
 私にはできない

 

 なぜだ?

 

 綺麗に説明はできない
 だがお前は邪悪な念に囚われている この世を良くしたいだとか言っているが そんなのは頭で考えた理屈だ
 その心の奥底は怨みの念に縛られ囚われ その一点に衝き動かされている!
 そんなヤツとは 手は組めーん!

 

 キン肉マン 第69巻、ゆでたまご集英社、2019、p52-54

 

基本的にキン肉スグルは戦いたくない性分がある。
特にネメシス戦でもパイレートマン戦でも逃げだそうとしていたが、「ハイ、相手がいるから戦え!」じゃダメで、「相手と何か戦う理由がないとダメ」みたいなところがあると思う。
それがあるからこそ、始祖編のラストで悪魔将軍に真っ向から立ち向かうことができたのだろう。


対してキン肉アタルは……スグルと同じように、戦わずに済むのであればそれがいいとするタイプなはずだと思う。
ただ、「男というものはあまりしゃべるものではない」「両の眼で静かに結果を見ておればそれでいい」と豪語するように、わかり合う気があまり感じられない。
タッグを組んだブロッケンJr.に平手打ちしたり、バッファローマンの足に鉄柱を投げたりしているのを見るに、「口では分かり合うと言いつつ、相手が分かってくれるのを待つ」という難儀なところがある。
それがアタルにとっての慈悲であり、スグルとの最大の差……なんじゃないだろうか。

 

 

節々を端折りつつ書いたけども、キン肉マンウォーズマンバッファローマンブロッケンJr.、悪魔将軍(ロンズデーライトパワー)がクソ力の3段階目に達した超人だと考えられる。
アタルの業火のクソ力も、系統は異なれども3段階目相当のパワーがあると見て間違いないだろう。

 

しかし、バッファローマンの3段階目はガンマンをガンマン自身の嘘から救うため(また、フェア精神に戻っていたため)、
ブロッケンJr.の3段階目はアリステラを自分に重ねて救いたいと思ったため、
悪魔将軍のロンズデーライトパワーはザ・マンを倒すためだけに発現した力……ということを考えると、いずれも相手に合わせて、一時的に発現した力だと思われる。

 

キン肉マンの敵とも分かり合いたい気持ちと、命を守るために闘う心情を得たウォーズマンが、ある程度誰が相手であろうとも3段階目を引き出せる超人だと思われる。
そのウォーズマンもスーパー友情モード=3段階目のようなフシがあるので、やっぱり3段階目はキン肉マンの専売特許と見るべきか。

 


ところで、

 ボクたち正義超人は対戦相手を殺すために闘ってるんじゃない!
 分かり合うために戦ってるんだ!

 

 そうだ だからリングを降りればノーサイド 遺恨はねえ!

 

 キン肉マンⅡ世 究極の超人タッグ編 第28巻、ゆでたまご集英社、2011、p218

 
息子たちにもこの精神は受け継がれてる、はず。
直前の描写を見る限り、明らかに2段階目なんですけどもね……。