2019年になったはいいものの、前の記事に書いた通りテレビがあまり面白くなく、ゴロゴロしてしまっていた。
そういえば、自分にはコミケ後にはお台場に行くという謎の習慣がある。
お台場なんて理由がなければ行くところではないが、ビッグサイトとお台場はそう離れて自然と行くことができる。ビッグサイト近辺で昼食を食べようとするとどこも混雑しているが、お台場あたりにはサイゼリヤや吉野家があるのも大きく、コミケ帰りはいつもその辺りで食べている。
しかし先のC95の際は用事などが多々あってどうにもお台場まで行く機会に恵まれなかった。思えばC94の際も疲労困憊で、行ったはずなのに何をしたかまったくよく覚えていない。
三が日ラストの1月3日、ここで行かねばいつ行くと思い、なんとなく出発。
豊洲駅からスタート
14:00ごろの豊洲駅。
あまりにもモロに人が映ってしまっていたので編集編集。
豊洲と言えばららぽーと。その初売りのせいか豊洲駅はまあまあの混雑。
ここのららぽーとでの買い物で1時間くらい要してしまい、駅前に戻ってきたころにはすでに15:00。
ここでシティサイクルを借りて快適に進もうとするも、手続きがよくわからない。
いや手続きをしたはずなのだけど、よくわからない。クレカを持っていないが、コンビニ支払いはできるとのことなのでやってみようとするものの、なぜか何度もログインさせられたりなんだりで借りる気力が一気になくなってしまった。めんどくさがりここに極まれり。
まあ、1500円浮いたと思うことにして、豊洲駅から歩いてお台場を目指す。
時間が時間だからかクソ眩しい。写真に何が映っているのかよくわからない。
日陰に入って、これはたしか「がすてなーに」。ガスの科学館。
このように変わった形の建物が点在しているシュールな光景がゆりかもめ沿線ではよく見られる。
自分はそんなゆりかもめ沿線の風情が好きなのである。
昔、フジテレビといえばいろいろなアニメをやっていた。サザエさんやちびまる子ちゃんのみならず、デジモン、こち亀、レジェンズ、ガッシュ。
バラエティは笑う犬などのコント番組よりもいわゆる普通のバラエティを好んでいて、トリビアの泉やめちゃイケをよく見ていた。
何より、娯楽に飢えていた年頃だったので、公式サイトにゲームコーナーを併設していたフジテレビが好きだった(マイティボンジャックよりも先にお台場ボンジャックを知っていた)。
そんなせいか何度かお台場冒険王にも行ったことがあるが、催し物自体はほとんど記憶にはない。
色々とテレビ局はあったが、その中でもフジテレビは特にイケてるテレビ局と当時の自分は考えていたはずだ。
日本テレビが汐留、TBSが赤坂にあることは正直あやふやだが、フジテレビがお台場にあるということはかなり強固な認識で間違いなく忘れないだろう。
しかし、この辺りはお台場ではなく豊洲だ。
少し進むと住宅展示場が見えてくる。おそらく一生縁のない空間。
ゆりかもめ沿線で住宅がこうも並んでいるのはここくらいだろう。
それほどまでにこの一帯、臨海副都心は、不思議な空間であるとひしひしと感じる。
全体的に小綺麗で、自分が思い描いていた近未来都市のイメージにもっとも近い。
そんな綺麗さの割に、少なくとも沿線に沿って歩いていけば、無機的で殺風景な光景が広がっている。
人と通りすがることはあっても、そう頻繁ではないので、「この人は何の用事があってどこからどこへ行くのだろう」とつい思ってしまう。
都心なのに、人里とかけ離れたイメージがある。
大きな交差点なのに人も車も少ない。
この橋は晴海の方につながっている。
写真で左のほう(豊洲市場)に歩こうとしても眩しすぎてそれどころではないので、ここから後ろの方面、つまりビッグサイトへと向かう。
あまりにも何もない道を進むと公園に入る。
背後には豊洲市場の青果棟がある。
写真の左側の方へ歩いて進めば、豊洲6丁目公園。
あまりにも珍妙なデザインの建物をバックに、芝生広場で様々な人が体を動かしている。
どうもこの建物は変電所らしい。
川を渡れば建設途中の建物が見える。どうもこれは2020年五輪で使用するマリーナかなにかの会場らしい。
正直に言って五輪は好きじゃない。それ以前にスポーツが好きではない。
一家の誰もスポーツに興味がない上に自分は運動音痴。そんな調子でスポーツとの接点ができないまま年を重ねてきてしまった悲しい怪物である。
T字状になっている高速道路。
この高架下に見える建物は有明中学校で、その隣に有明小学校があるらしい。
高速道路と隣接する学校とは中々おもしろいような、まったくもってそうでもないような。
防災公園から夢の大橋へ
凧が浮いて見える。
そして遠くにビッグサイトが見える。つまりここは防災公園である。
本当に防災公園なのか疑わしくなって調べたものの、やっぱり防災公園だった。
コミケの時以外防災公園に縁はない。そのコミケの時はコスプレイヤーとカメラマンで地平線の彼方まで埋め尽くされているので、ここまで広いものだとはまったく知らなかった。
その防災公園にはかまどになるベンチ以外に何もなく、あくまで防災用に広い敷地をとっているのだろう。
振り返って撮影。殺風景とも、その対義語に該当するとも言えない光景。
コンビニも何もほとんどないし、だだっ広い殺風景だしで、歩いていると孤独が強まってくる。どうして自分は一人でこんなところを歩いているんだろうと。
この街に人は住んでいるのだろうけど、その人はどこに住んでいるのだろうと思い、不安にも近い気持ちになる。
さっきの公園からここまでにすれ違った人の数は3人くらい。まあ三が日だし仕方ない。
この辺りにはGoogleマップで見ても何なのかよくわからない建物が多かった。ますます謎な街。
いや、防災公園には何もないわけではなかった。
自販機に、GreenTeaが緑茶を指すという旨のシールが。外国人観光客向けだ。
しかし、この状態ではおしるこを買おうとすると緑茶が出てきてしまうんじゃないかとあらぬ不安も感じさせる。
寒いが、水筒があるので結局何も買わなかった。
このままビッグサイトに進む。
当然、三が日なので何も催しものなどやっていない。今日(1月5日)はインターンシップの説明会をやっていたらしい。
販売会や説明会などで足を運んだことがある人なら、この辺りがコミケと違って閑散としていることに、自分と同じくちょっとくらいは驚いただろう。たぶん。
こんなところでレンタサイクルなど誰も借りようとしないのか、きれいに並べられている。
ビッグサイトの辺りにもなると、なんらかの用事で足を運んだのか、人影がちらほらと見えた。
平成最後のコミケ、C95が終わった。
当然、コミケの際にあった熱狂とか情熱もとっくになくなっている。ビッグサイト=コミケとしか結びつかない発想の貧困さは少々嫌になるが、寂しさを感じる。
馬鹿でかいモニターには何も映っていないし、会場内のセブンイレブンも本日は閉業。ベローチェはやっていなかったが、ファミリーマートやサイゼリアはこんな日でも営業しているようだった。
自分はコミケが好きではある。多分行き始めたのはC80台の新参。
もちろん、参加するのは頒布する側ではない一般参加者側としてだ。スタッフなど運営側としては、真面目に取り組んだとしてもあの人波をコントロールする自信が毛頭ないので、そちらでの参加は今のところ遠慮したい。
他のコミケ参加者の方がどう思っているか知らないが、自分にとってコミケ含む同人誌即売会のようなイベントは、自分が許されているように思える空間である。
それは何をしても許される空間だから……というわけではなく、あの会場の熱気が作り出す独特の空間が、自分みたいな存在でも生きていていいと許されているような気持ちにさせてくれる。あまりにも独特すぎる感情だと思うので言語化ができないがフィーリングでわかってほしい。
さらに、いくら本を買ってもまるで気にならないので、多分あの会場内では脳内物質がドバドバ出ているはずだ。
コミケは特にここ数年の間、様々な岐路に立たされているんじゃないかと思う。
来年や再来年は会場関連でだいぶ変更があり、その影響で同人作家も潮時かと筆を置き、仕事の減った印刷会社が畳むのではないかという危惧とかなんとか。
さらに表現のナントカとか、今年は頒布物関連で何かがあったとか。
次のコミケがどうなるのかはいざその時になってみないと何もわからない。ただ、自分が安らげるあの空間を維持できるのであれば、力を貸せるだけ貸したいような気持ちになっている。
この辺りですでに16:30ごろだったと思う。出発からもう1時間半経っていたらしい。
(もはや、ビッグサイトをコミケ会場としてしか認識していないのか、素でコミケ会場と打ってしまった。いや他にも同人誌即売会あるでしょうが)
たまに結婚式の様子が見られたりする教会風の結婚式場と、巨大ロボの足のようなビル。
この夢の大橋は、仮面ライダーWの最終話に出てきたとか、仮面ライダー大戦の終盤に出てきたとか、特撮以外にもドラマの撮影地として有名な場所である。
この橋を歩くのはコミケの時くらいで、3日目の帰りもここを歩いていた。
コミケから撤退した後、この橋をまっすぐ歩いていくと、前にも横にも後ろにも同じようにコミケ帰りと思わしき人がいくらか見える。
向こうの東京テレポート駅側からコミケとは関係ない外国人観光客や家族連れが歩いてくる。
そしてパレットタウンの辺りに差しかかると、同士(と勝手に呼ぶのも失礼な気がするが)は完全に紛れて見えなくなる。自分も大した荷物は持っていないので、ほとんどこのあたりでコミケとは無関係の人に紛れ込む……。
歩くたびにこのような気持ちになり、ビッグサイトではまだコミケが開いていても、自分にとってのコミケはここで一段落ついたのだと、無性にせつない気持ちになる。
パレットタウンからレインボーブリッジへ
パレットタウンだか、ヴィーナスフォートだか、どちらで呼べばいいのかわからないが、とにかくその前。
夕方でも、商業施設となれば人はかなり多い。豊洲駅前ほどではないがかなり人がいて正直びっくりした。
ここを代表するものといえば大観覧車である。
中学生か高校生のときか忘れたが、一人でお台場に来た時(多分お台場冒険王だろう)、観覧車に乗った。
一人での観覧車とは今思えばかなりぼっち行動の中でも上位に来るものだとは思う。ただ静かに乗って、観覧車の上からの絶景を眺めていた。
観覧車を下りると、乗る前に撮られた記念写真を1000円で売ってくれると言われた。カップルや家族連れならまだしも、自分は1人で来たのだから、これを買っていたらかなり度胸のあるやつと思われたんじゃないだろうか。当然、今も乗る気は起きない。
時間が遅かったのでここには用はなく、テレポートブリッジを歩いて海浜公園に向かう。
BOSSのコンソメスープを飲む。うまい。
都心に海水浴場となるような場所があるのも変な気がするが、ここは都心の海沿いの方なので、海水浴場があるのは当たり前である。
夏の午後だったら人は山ほどいるのだが、冬の夕方なので、ほとんど人はいない。
後ろには「ディアボロモンの逆襲」に出てきたお台場中学校がありますが、今は小中一貫らしい。よくわからないです。
自分がデジモンアニメで一番好きなのはテイマーズですが、次点では無印のヴァンデモン編もとい現実世界編が挙げられます。
子供達はデジタルワールドから山奥のキャンプ場に帰還するが、同時に現実世界で8人目の子供を探そうとするヴァンデモン。
光が丘から新宿へ、そして我が家のお台場へ。
東京湾、東京タワー、渋谷、第三台場などでヴァンデモンやその配下たちと激突。
そして35話からは、お台場全体をヴァンデモンの作った霧が覆いだす。団地にいた太一とヒカリ、建設現場近くに隠れたヤマト、他の人々と一緒にビッグサイトならぬビッグファイトに捕まった空とミミ、別の団地から合流を計る光子郎、お台場の外にいた丈とタケル……と、散り散りになっていた状況ながら、ヴァンデモンの元を目指してフジテレビへと向かう群像劇のような構造。
現実世界を舞台にした独特な空気感とシリアスな状況が、テイマーズ序盤までとは似ていても全然違う空気になっていて、たまりません。
多分、お台場に独特な空気感を覚えるのはデジモンを視聴していた影響が大いにあるのではないかと思えます。
まだ時間に余裕があるので、今からレインボーブリッジを渡る。
先に書いたように……もうパレットタウンの前にまで来ると、コミケの気配はほとんど感じられなくなる。
テレポートブリッジを歩いてアクアシティ方面に向かえば猶更で、そこのサイゼリアに、パンパンに膨れた鞄を持った客など1人もいない。
ただ、りんかい線や、ゆりかもめで有楽町線に乗って撤退する人々は、コミケに参加した者同士が乗り合わせる奇妙な空間で各々の帰るべき場所に戻っていく。それに対して、自分は徹頭徹尾、一人。
どこかで、「自分はコミケの後にレインボーブリッジを渡る」という話を目にしたことがある。
その人が他にどういったことを話していたかは覚えていないが、去年の夏か、一昨年の冬か、そのあたりにはじめて実践してみたことがあった。
長い長いレインボーブリッジを歩いて渡れることは、その話を聞くまで知らなかった。
その時、一緒にコミケの話で盛り上がれるような仲間もおらず、当然打ち上げには縁がなく、コミケの香りなど一切しない道を歩いてここまできて。その時と今とで何かが違うわけでもないが……。
いざレインボーブリッジを歩きだすと、眼下に海が広がり、高層ビルやお台場の街を見渡すことのできる絶景が広がっていた。
「ここでなにか災害でも起きたら海に落ちて橋に潰されて死ぬんじゃないか」という不安で足の骨が痺れていくように思える。
初めてここを歩いた時、光景の美しさ、自分が孤独である寂しさ、高所の恐怖、自分にとってのコミケが終わった切なさ、副都心の奇妙な情景の頂点が入り混じるあまり、その時はもう感情の波に押し流されて、心ではもう泣きだしそうになってしまった。
目からは一滴の涙も出てこなかったが、今までに感じたことがないあまりにも奇妙な感情で、レインボーブリッジを歩くたびにその感情が想起されそうになってくる。
実際、今回もそうだった。
奇妙な情景としてはここがある。
レインボーブリッジの通路は両側にあり、ここはそこを繋ぐ通路。
寒いし風が強いしで、手袋はおろかスマホも吹き飛ばされそうな気持ちになり、ブレていても撮り直すことなどとてもできなかった。
上の方では車やゆりかもめが通っているが、ここには何もない。わざわざレインボーブリッジの両側を通ろうとするような人以外、誰もここは通らない。真下は海。
漫画に例えるならば、能力に覚醒していない主人公が怪物に襲われそうな所。怪物でもデジモンでも現れてきそうな気持ちになってくる。
防災公園のあたりでは広いのに誰もいない孤独を書いたが、ここは狭い空間なのに真下に海が広がっているわけのわからなさがあり、孤独と恐怖の濃縮をいっぺんに楽しむことができる空間である。レインボーブリッジでこんな変なことを考えている人間など他にいるのだろうか。
最近のスマホは夜でもきれいに撮れる。技術の進歩。
おわり
レインボーブリッジを下りると、公園が見える。あの向こうがお台場の街なのかもよくわからない。
さらに進めば芝浦ふ頭近くの交差点。しかしここにも人通りも車通りもほとんどない。
ただ、お台場にいた時とは違って、地に足のついている感触に安心感を覚える。ようやく人が住んでいるようなところに戻ってきたような。
別にお台場近辺が人間の住むような環境ではないというわけではないが、直前があのレインボーブリッジだったせいか、すごく安心感を覚える。
ここからは完全にその人ごとの自由となる。
少し歩けばゆりかもめの芝浦ふ頭駅、もう少し歩けば田町駅か三田駅。好きな手段で家に向かえばいい。
02で賢ちゃんが田町に住んでいたためにデーモン軍団の襲撃から孤立したようなエピソードがあったようななかったような気がするが、実際お台場と田町は結構離れている。歩きでは。
ここまでの旅は孤独に虚無を覚えてばかりの悲しいものだったが、ここまで来たら後は帰るだけになってしまう。
いくら人生に孤独を感じていても、もう帰るしかない。もう17:30ごろだし。
明日からもう仕事が始まる。たとえいくら嫌でも、ここからあと16時間したら労働が始まる。逃げ出そうと思っても冷たい海の中に飛び降りない限り、必ず明日は来る。
デジモンはフジテレビの手を離れて明後日の方向に一輪車で突っ走ってしまったし、アニメもバラエティも面白かったフジテレビはゲゲゲの鬼太郎くらいしか見ていない。あれだけ楽しかったC95はとっくに終わってしまっている。
昔はよかった、ではなくて、時間が進むのは怖い、という心持ちだ。
自分の抱えている孤独は明日になれば解消されるものではないかもしれない。10年後もまだ元気にコミケがやっていたら、同じようにビッグサイトからここまで来て、同じように果てしない孤独を感じている可能性が高い。
小説か何かで、僕の孤独は魚で言うならクジラくらいに大きいだろうという言葉が繰り返し強調されているものがあったが、内容も覚えていないのにその言葉だけが絶えず浮かんできてしまった。
早く人間を卒業させてくれ。