ウツボよおどれ

livedoor→livedoor→はてな(イマココ)

デジモンアドベンチャーtri 第6章に向けて

 

 


「デジアドtriって全6章もあるの?終わるのいつだよ」と思っていたものの、時が経つのは早く、もういくつ寝れば第6章の公開日が来るころでしょう。
まあtriが洒落にならないくらいにゲキヤバな作品であることは、デジモンを追っている人なら知っていることだと思います。

いきなり話は変わりますが、現在自分はデジモンをあんまり追っていません。
ゲームはリデジすらもやってませんし、復刻されたカードやプレバンのギアは未着手。
アプモンは体験版も触れておらず、せいぜい「アニメは一通り見た(アプモンも最終話前くらいまで見れた)」「アプモンの漫画版は読んだ」くらいに薄味。
デジモンに深い思い入れもそんなにないんじゃないか」「サザエさんとかと同列に見ているんじゃないか」と自覚しております。
ですが、いくら思い入れがなかろうとも、triをきっちり第5章まで見たというのは事実であり、6章が見られるようになったらなるべく早く見るような程度にはデジモンを追っている人であるとは思います。



以前、自分は積極的にオリジナルの作品を作ろうと着手していましたが、それは中々うまくいくものではありません。
話の筋がとっちらかったり、致命的な矛盾が続いたり、展開よりも自分の萌えを優先したり。
特に書き続ける理由もないのでモチベは低く最後までやり遂げられたことはほとんどありません。

そして色々な商業作品を見ては自分が情けなくなってしょうがなくなります。
話の筋がしっかりしていて、矛盾があっても気にならないほどに巧みな展開でありながら、作者のフェチズムに溢れている。何より完結している。
やはりプロは自分と見ている世界が階層ごと異なるのだなあと思ってなりません。

そんな良質な作品ばかりではなく、微妙な作品にぶち当たることもあります。
アニメだろうとゲームだろうと漫画だろうと関係なく、微妙なモンは微妙です。
それでもプロの商業作品とだけあって、作り手としてのレベルの差は自分などと比較するまでもないほどに高いです。
しかし受け手としての立場に立って見ていれば、辛辣なくらいに「なんでこんな作品が世に……」と思ってしまうのもまた事実。

そんな微妙な作品であっても、良質な作品と変わらず、何かしら作り手の”熱意”を感じます。
名前は伏せますが、「キャラゲーらしく遊びごたえもストーリーも弱いが、原作再現要素と戦闘アニメーションのこだわりに限って見ればスゴい」とか、
「矛盾だらけで話がヒドいと言われるのも無理はないが、要所要所の盛り上がりがすごい」とか。
そういう局所的にだけでも熱意がある作品は、たとえ他の部分が悪くとも記憶に残り、後の満足感が高いと思います。



triはどうなんだろうなと思っています。少なくとも、triは微妙な作品に分類されます。
自分はこの作品から熱意らしいものを感じていません。あるのかもしれませんが、伝わってきていません。

「究極体デジモン勢ぞろい!そして熱いバトル!」 ……戦闘シーンは短いし、デジモンの声がないから盛り上がらないし、バンクはひどいし。
「高校生に成長した子供たちの甘酸っぱい青春!」 ……02までの恋愛描写ほとんど放置。ついでに、02での先輩描写も。
「とにかく良質なストーリー!」 ……それだったらば質問タグは炎上しない。
デジモン愛に溢れる制作陣が送るデジモン愛溢れるシリーズ!」 ……制作陣のデジモン愛は別として、無印と02を視聴しきっているかすらも怪しい。
「君はそこにあるだけでいい。なんたってデジモンの続編なんだから」 ……声優の大半が入れ替えで子供たちの絵はお世辞にも。サブキャラ登場などのファンサービスも弱い。
「時代は原作の破壊者! オリキャラ夢主で公式二次創作!」 ……だとしても、芽心とメイクーモンについてあまりにも雑。

……思いつく限りの角度から挙げてみましたが、考えれば考えるほどに何がこの作品のウリなのかわからなくなります。
triが好きという人は一定数いるとは思いますが、そういう人でも上の要素をどれくらい受け取れているのかはわかりません。
(しいて言うなら、「なんたってデジモンの続編なんだから」くらい)

「制作側は儲かり、ファンは商品を手に入れた」という視点では、制作側のカツカツな事情やデジモンカイザーのラバストを見るに難しいところ(カフェなどのコラボもあるっちゃあるが)。
捻りだすならば、「新たな形で二次創作ができる」とか「新作によりデジモンファン同士が活発になり交流の場が生まれた」とか「声優などといった一部固定ファン向け」程度の、
『シリーズものの現行作としてのごく最低レベルの価値』くらいしか見出せません。
「まあ自分はこの作品のターゲットではないので仕方ない」と思おうとしても、triのターゲットは無印視聴者なのでなおさらなこと。
今の時代、リメイク・続編は原作愛が一定量あるだけで評価がされるのに、それすらもないのはtriの出来の悪さを伺えてなりません。


良い作品に出会った数だけ、微妙な作品にも出会ってきているのが人生ですが、
自分はそんな微妙な作品に対してキレるよりも、なぜどうしてこうなったのかとを勘繰るようなタイプです。
「受け手側の改善案は作り手にとって役に立たない」とはよく言いますが、ならば代わりに「じゃあどうしてこの点はこうなったんですか」と聞いて答えをもらいたいところではあります。
率直に言えば大人の事情なんでしょうけども、そのためにデジモン最大の切り札を費やしたのは不憫でならないと思います。



ここからはtriの各章ごとに書いていこうと思います。
もちろんこれまでのtriを見直して感想を書いていくのは精神と時間ともにかなりの無茶なため、各種感想サイトなどのあらすじから記憶を掘り起こして書いていく形になります。


・第1章「再会」
今になってみれば、「無印子供たちがデジモンと別れている」という設定が「少なくともタケルたち02組や大人たちは02キャラを認識している」によりわけのわからないことになっています。
02勢に関するふんわりした設定と、太一の昼食に関する諸々が気にはなりましたが、第1章ということでそこまで不安視しておらず、また疑問になる点もなかった記憶があります。
戦闘は空港などを荒らすクワガーモンを対峙し、アルファモンには後れをとる形になりました。


・第2章「決意」
「あ、この作品やばいんじゃないか」と思った章。
02のころの頼れる先輩感がカケラもない丈、自己中が過ぎているいミミ、再登場するも死ネタだけ回収されたレオモン、学園祭や温泉の浮ついた雰囲気……etc
丈の悩みが受験でミミの弱点が自己中なのはご存知の通りですが、焼き増し以上に解決までの過程が薄すぎるのが単発の作品としてまずいと思います。特にミミについて、この章では共感どころか好感度が上がる気配すら見えない。
芽心も親睦会をやっていた割には馴染めていない(第5章現在でも)ので、もう。
感染オーガモンとの一戦は周囲へのデジモンに対する不安が増加したというストーリー上での重要なポイントになっていますが、インペリアルドラモンとの戦いは02勢が忘れられている難点に加え、メイクーモンによるレオモンしゅんころのインパクトで薄れてしまった感があります。


・第3章「告白」

タケルについては意見が割れやすいところで、一度パートナーを失ったタケルがパタモンの感染を前にどうするかはそう簡単に語り切れることではないと思います。
しかしそれ以外の点はグダグダとグダグダ。
「感染やばいよやばいよー。あーどうしようどうしよう。とりあえずメイクーモン押さえなきゃ」とし続ける上に空気もあんまりよくなく、話はほとんど進まない退屈の極み。
おまけに、リターンがない限りやってはいけない禁じ手であろうリブートが、健闘むなしく()あっさりと実行されてしまい、かなりのお通夜感が作品全体から溢れてきてしまっていました。


・第4章「喪失」
自分の中では導入である第1章と同じくらいに出来が良いと思っているのがこの第4章です。
制作陣の間でもこれまでの評判からムードが変わり、ここから第6章まで一気に突っ走るのか、と思っていました。
もちろん、リブートの意味のなさ、なぜか空にだけ辛辣な態度のピヨモン、芽心の存在、クソ弱いムゲンドラモン、子供たちの準備のなさなど目も当てられないほどにひどい部分は挙げられます。
ですが、舞台はのんびりしていた現実世界からデジタルワールドへと移り、姫川と西島が本作において欠かせない最重要人物であるとクローズアップされ、謎の男はダークマスターズを使役。
話が動いているというだけでも、triという作品にとっては出来がいいと評せる事実。
無印がデジタルワールド再突入からラストに突き進んだという確かな実績もあり、ここから第5章で巧みに伏線などを回収し、第6章に進むのではないか……と思っていました。


・第5章「共生」
ふ ざ け ん な


第4章で話を動かした分、第5章で話を進めないのではないか……と。
メイクーモンが暴れまわっているのはまだいいとしても、姫川は放置するし、現実世界に戻ったことでわざわざダークマスターズを倒した意義も薄れ、デジタルワールドに向かったのはリブートしたデジモンを回収するためだけなのかと思われる、とにかく意味の解らない路線。
デジタルワールドでのダラダラした描写から、現実世界には帰還してみるもののダラダラした展開が続き、西島やハックモンなどの会話から第6章に進める道は建設しているものの、明らかに尺が足りなさそう。
八神ママが子供のことを想ったり、怪談話をして和ませるのも悪くはないと思います。
でもそんなことをやっているヒマがあったら、鏡面世界のごとく人影のない現実世界の人々をデジモンが守るとかいった描写を入れてほしかった。
公開後によく言われてましたが、「公式のあらすじだけでまとめられる」「デジタルワールドから帰ってメイクーモンがキレてオルディネモンが出ただけ」とあまりの内容の薄さにびっくりしました。



……あと3章分くらい残っているならまだいいですが、第6章は現実の物として迫ってきています。ある意味リブートより恐ろしい。
第1章やラストにつながる第5章ではいいとしても、第2章ではメイクーモンが暴走した上にレオモンが死に、第3章ではリブートが起き、第4章ではリブートから復帰する者のメイクーモンが再度暴走と、
子ども達のやることなすことが良い方向に向かっておらず、ただただ話が暗いのはやるせないです。

仮にこれまでのダメな点をすべて回収したとしても、これまでの具合から作品としての出来はほとんど期待できません。
まあ、物は試しで、ちょっとでも期待するような点だけでも並べてみると、

・芽心とメイクーモンの関係は修復できるのか。
・選ばれし子供達はどれだけの成長を遂げることができたのか。
・ここから02の最終回につながることがあるのか。
・各キャラの恋愛状況はどうなるのか。
・02勢は回収されるのか。
・そもそも、「tri」世界はどんな世界なのか(ベリアルヴァンデモンを倒していても02の話をなかったことにしたのか、選んではいけなかった未来とは)。
・サブデジモン・主人公たちの親類・エージェントはどのように扱われるのか(人間は本当に八神ママ以外どこいった)。
・民衆の反デジモン感情は修復に向かうことがあるのか(太一が外交官になりますだけで片付けないでほしい)。
・ホメオタスシスやイグドラシルや謎の男のうんぬんかんぬん。
・姫川や西島はどうなるのか。

はい。ちょっとしたビンゴが作れてしまいそうな量です。
90分そこらの上映時間でこれらすべてを回収するのは無理・無駄・無謀な上、そこまでしてもプラスになることはない。
正直な話、2・3・5章は遊んでばかりではなく、少しでもこれらの点に収拾をつける努力を見せてほしかったところです。



・第6章に向けて
言ってしまえば、第6章は完全に敗戦処理的な状況です。
「第5章まではダメだったけど第6章ではなんとか」というのは完全に遅く、第5章の時点ではっきりしてほしかったところ。
先日のイベントや質問タグで制作側の内情らしきものも見え隠れしており、期待を持つに越したことはありませんが、この状況でそれは難しいです。
第7章なんてものがあればまあ別ですが、ないと思います。

アプモンアプモンでアニメが終了した後は完全に存在がなかったことになっているのと同じく、triも同じ道を辿るのではないかと思いますが、
アプモンの失敗は簡単に片付けられたとしても、triの場合は道連れを伴ってでの失敗なので中々救いようがない状況。

第6章でやってほしいことがあるとすれば、スタッフはこの作品で視聴者に何を伝えたかったのかを明らかにしてほしいです。
開始数分で戦いにケリをつけて子供達のイチャコラをやるか、それとも最初から最後までアメコミ映画ばりに戦わせまくるか。
第6章単体で見ればまとまった良質ストーリーにするのも、芽心やメイクーモン・西島姫川に傾倒するのも、説教臭いくらいに未来の子供達に向けて……みたいな話にしてくれても。
「3年間くらい、何がしたいのかよくわからないつまらない映像を見続けた」なんてあまりに救いがなさすぎるので、せめて第6章では何か爪痕を残してほしい……と思うのは願いすぎでしょうか。