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ブラック彼女という漫画の感想

 

 

結構前の話、本屋で良さげな漫画を見繕って表紙買いするという趣味を持っていたころに、ブラック彼女という漫画を買った。全4巻。
 
 

comic-walker.com


タイトルからするとヤンデレものな感がある。そして自分はヤンデレスキーだ。だから買った。

主人公・星野テルくんが好きなクラスメイト・天宮ミドリさんは挨拶がわりに関節技を入れてくる胸の大きな子(かわいい)。
そんな彼女にはミッちゃんという別人格があり、猟奇的な具合に振り回してくる。
そればかりか、通り魔な先生・月岡、主人公を犬とみなすお嬢様・火鳥、スナッフビデオ好きな女刑事・水守、約束を何よりも重視する柔道女子・木林、なんか不運な子・明日野など、テルくんの周りには変わった人間ばかり出てくる……というお話。
 
なので猟奇的なシーンばかり出てくる。
しかも「腕を一本持ってかれた」とか「アバラが数本折れた」とか「銃で撃たれた」とか想像しにくいような痛みは少なく、
「●を刺された」とか「●を抜かれた」とか「自分で自分の●を折った」とか想像のしやすい痛みが多い。痛い。

自分が好きなのは、お嬢様の火鳥リリ、カトリリ(あだ名)。
最初は黒い長髪だったが、主人公の好きなタイプが明るい髪色のショートヘアだと聞くやいなや、髪に漂白剤を浴びせてばっさりカットし、以降は金のショートヘアになるというアグレッシブさ。
主人公を昔飼っていた犬と見なして監禁するもミッちゃんに追い詰められ、ボストンクラブを受けて危うく焼死しかけるという、とてもとても献身的なヒロインである。

 

全体的に絵は綺麗だしかわいい。
ただ、上に挙げたカトリリが漂白剤を浴びるシーンやボストンクラブを受けるシーンなど、衝撃的なシーンは迫力重視のかなり荒い絵になっている。
単に荒いというよりも、一度綺麗に描いたものを加工して荒くした感じ。
雑誌側の規制によるものかはわからない。迫力はあるけど絵が綺麗なので勿体無い印象。
あと、単行本最初のカラーページは妙に線がガビガビしている謎。


この作品のキモはやはり天宮さん・ミッちゃんである。
ミッちゃんは危険がたっぷりな人物なので、星野くんや他の人物、さらには自分自身を危険に晒すことに躊躇がない。
そうなると、「ミッちゃんの人格を有している天宮さんとはなんなのか?」という謎がある。

一般的な二重人格キャラと異なり、天宮さん←→ミッちゃんの入れ替わりのルールは明示されない。
天宮さんの暗い小学生時代を知る人物が出てきたり、天宮さん含めた猟奇的な人物たち(そのくくりはどうなんだ?)は同じオルゴール人形を所持しているなど、謎に満ちた展開が続く。
 
そんな感じなので、天宮さんとミッちゃんは、ジキルとハイドというか、単純な怪異といった次第で、素直にかわいいヒロインとして受け止めるのが難しかった。
巻末のおまけギャグ漫画で補完されてる月岡先生やカトリリのほうが好感度が高くなる現象が発生してたかと思う。
 


そして4巻で唐突に完結する。
勘のいい人なら気づいたと思うけど、先に挙げた人物の苗字が月岡→火鳥→水守→木林→明日野と、金土がすっ飛ばされてるのである。
ラストはある程度綺麗にまとまってはいるものの、説明不足な点も多々あり、初めて読んだ時は「ひっでえ打ち切り!」と思ったものだった。
事実、オルゴール人形の謎は2コマで処理され、天宮さんとミッちゃんの関係も明らかにはならない。
 
途中で打ち切りが決まって強引にまとめたのかな…と思った。
掲載していた雑誌は連載の入れ替わりがまあまあ激しいらしいので、その都合なのか、もしくは単純に人気が奮わなかったのかはわからない。
 

しかしながら、時間が経ってから読み返してみると、伏線めいたものに気づくことができた。
たとえばラストで天宮さんが急に生まれ変わりについての話をするが、1巻の時点でミッちゃんが生まれ変わりについての話をしているなど、この辺りはもう少し触れて掘り下げる予定だったのが伺える。
とはいえ、「ミッちゃんは天宮さんの演技に過ぎない」とか、「小学生時代の天宮さんは今とは別人同然だしミッちゃんともまた別人」とか、作中の描写通りに受け取っていいのかわからない謎なシーンが多い、多すぎる。
 
 
天宮さん関連の事象は深く考えないようにすると、復讐のために人生を送ってきた明日野さんが切なく思えた。
カトリリは終盤の展開に絡まなかったから、しょうがないね……。
あとは、この作品には猟奇的な性格の人物ばかり出てくるけど、どれも一般人に偽装できてるなあと。普段の振る舞いからサイコなミッちゃんとは対照的?
 

よく言えば考察の余地がある、言い方を変えるとどうとでも解釈できる。
この物語の真相に迫ろうとすると中核が妄想を占めてくる。
このあたりはどうにも悩ましいなあという話でした。