ウツボよおどれ

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デジモン02ザビギ感想

 

 

 

 

大体

 

良かったところはこれまでのデジモン映画(tri.、ラスエボ)に見られた、悪い方向にばかり進んでいくシナリオ展開ではなかったことでした。

この方針がどうしても自分の中で引っかかっていて、「ウッコモン大暴走! インペは負けるしルイも絶望!」とか、「ウッコモンは消えたけどブイモンたちも消えちゃった! まあ覚悟キメてたんだしいいよね?」だとか、鑑賞中はそんな展開になるんじゃないかとずっと気にしてました。

後味が悪くなるような内容を抑え、「ウッコモンとルイは仲直り! 敵には完勝して最悪の事態を防止! ブイモンたちは健在!」と、結果を見ればまあまあポジティブな方向に終わっています。

 

 

 

その一方で、映画としての満足度はだいぶ低かったです。

ノンストレスなのはいいことですが、それが行き過ぎるとカタルシスに欠けた印象もあります。

自分がだいぶわがままなことを言っている自覚はありますが……。

 

特にラスエボとは比較するように見てしまいます。

バディものでは離別する展開が定番であることを知りつつも、自分はそれがあまり好きではないのでこの映画は1回しか見ていないのですが。

オメガモンがズタボロにされたり、パートナー関係解消ゲージを気にしまくってうじうじしたり、誰が犯人なのか全然わからなかったりと、なにかと視聴者に耐えを要求する展開が多いです。

しかしその分だけ先がどうなるかわからず、どういうオチへ向かっていくのかがわからない、エンターテイメント性の高い映画だったのだと今になって思います。

どうなるかわからないという観点でいえば、おジャ魔女どれみの新作映画『魔女見習いをさがして』も同様で、割と好みです。

 

対してザビギは、まずルイが「パートナーデジモンを忌避する」「片目がデジモンと化した異形」「ウッコモンのことを憎んでいつつもデジヴァイスは捨てずに持ち続けている」「選ばれし子供ではありつつもパートナーに先立たれてるし冒険の経験も皆無」と多くの要素を内包していながらも、事を荒立てることをしません。

ウッコモンも大いなる者や選ばれし子供との関係を匂わせまくりますが、全体的にぼかした描き方をされているし、聞き分けがまったくなっていないわけでもありません。ビッグウッコモン出現によってボレロが流れてデジタルな異常現象が発生するのももう慣れっこです。

そんなルイが身の上話をしてウッコモンと対話し、話はこじれすぎることなく、大輔たちはちょっと戦って終わり。映画としては肩透かし感が強かったです。

 

要はこのあたりにおいて、「デジモン映画の悪しき慣習を断ち切ってくれて嬉しい」と「ドラマに起伏がなく、バトルシーンも少ないので、映画としての満足度は低い」という感情が両立していました。

 

 

 

 

ルイとウッコモン

 

この映画の主役は新規キャラのルイとウッコモン。その関係は見てて重苦しいです。

善悪の判断さえつかないような4歳児が全知全能のウッコモンを従えたおかげで、幸福を得つつも日常は崩壊していきました。

最終的にデジヴァイスを破壊しようとして片目を失い、ウッコモン自体も消滅します。

(ここについては「両親を殴るのは倫理的にまずいからデジヴァイスに変わったのでは?」って感想を見てひえっとなりました)

こうなったのはルイがまだ幼く、周りに信頼できる者が何もなかったための結果でしょう。パートナーを失うかもしれないと言う事態を前に、長年の友情や信頼できる仲間を基に判断を下せた02組とはえらく対照的で、残酷です。

 

 

 

しかしながら、ルイの家庭環境が話をややこしくしているように思えました。

1996年時のルイが不幸だったのは母親のせいです。父親は事故か何かで植物状態になったのか、その介護で経済的に困窮して精神的にも余裕がなくなり、ルイに当たるようになったのは明白です。

そこにやってきたウッコモンは超絶パワーで母親を優しくさせ、父親も働けるだけにして大和田家を取り巻く不安はすべて解消され、普通の家庭の形を取り戻しました。

もちろんそんなにうまくいくことはなく、この時点で両親は人間としての死を迎えてたのだと思います。

 

おそらくこの映画のテーマに「パートナーデジモンが主人を絶対肯定する存在ってどうなの?」というのがあるため、ウッコモンはそこを履き違えてるキャラとして設定されたんでしょう。

ですが、ウッコモンに縋りだしたルイはまだ善悪の判断すら曖昧な4歳。

そんな死と隣り合わせに生きている少年がささやかな願いを持った顛末として、「でもパートナーとしっかり対話せずにウッコモンに頼ったルイくんも大概だよね」とお互い様になるのはきついと思いました。

それなりに恵まれてた少年がより多くを求めた結果の自業自得ルートのほうが丸いと思っています。

 

 

 

次に、この回想パートはだいぶ長いです。

不必要に長いというよりも、ルイとウッコモンを描くにあたって必要なシーンが多すぎるので長いような印象を受けます。

ただそれにしたって現代のルイが今のところ闇を抱えているのは明白だったので、もっと巻けたのではないかとも……。

実際、話の途中に2回ほど小休止が入るほどに長く、体感的にも映画の1/4~1/3を占めている感があります。

同時期に公開された別の某アニメ映画(……まあこのブログ読んでる人なら大体わかるだろ!)は長めの過去シーンをいい感じに処理していてメリハリもつけて描いてため、そのあたりに差は感じました。

この回想パートのくだり、友情の証明として突如握手を決めるブイモン、ウッコモンが可哀想とハッキリ言うヒカリ、ディア逆に動揺して責任感重いことを言うルイなど、このあたりは全体的に空気感が妙に思えていました。

ディア逆を目の当たりにしつつも、ウッコモンのデジタマが出現するまでの8年間?は何かしている様子でもなかったのはもったいなかったです。

 

 

最終的にルイは過去の仮想世界に再度向かって母と対話します。

子供に対してあれだけ厳しい態度で接していた母の態度が柔らかいのはルイの希望的観測によるものなんでしょう。

ルイが両親について言及するのは過去回想シーンのみで、現在どれだけ想っているのかははっきりとわかりません。それでも自分のせいでウッコモンに殺されたと言っても差し支えない母への贖罪が込められているとは思います。

ただウッコモン無しで過去のルイがまともに生きるためには母親の方から手を取る必要があるというのも残酷な現実としか言いようがないでしょう。

 

 

 

このバディの過去描写は全体的に色々と気になりますが、最終的に仲良くなれているのもあって、感触自体はそこまで悪くありません。

それでも細かい部分ですが、和解したあとの「ウッコモンはルイが本当に好きな食べ物も知らなかった」というほほえましい会話に違和感がありました。

このバディは作中当時のキャラの中でもっとも長い年月を共に過ごしていたし、関係が崩壊するまでは実際仲睦まじかったので、どうして事実を話していなかったのかなと……。

あと個人的な感想として、ウッコモンの認識しているルイの好物がハンバーグとケーキと野球なの、典型的にお利口な子供って感じがしてここは面白いですね……

 

 

オチ

それで最後はデジヴァイスがこの世から消滅しました。

ラスエボからスマホデジヴァイスが登場したり(確か)、ルイの遺恨の象徴として割れたデジヴァイスが登場しつつも、意外なくらいにあっさりと消えました。

「ビッグウッコモンを浄化するために全世界の子ども達がデジヴァイスを掲げる」といった最後の役目が描かれることもありませんでした。

戦いが終わってデジヴァイスが光り出した時、「ああ、ブイモンも消えるのか……? 消えない!?」と混乱したくらいで、ウッコモンを消滅させるかブイモンたちを消滅させるか折り合いがつかなくなってデジヴァイスを消したものだとも思っていました。

 

なんというか……この映画全体に言えることですが、ルイは自分が初めてデジモンとパートナー関係を結んだと言いつつも本当に結んだだけに過ぎなかったり、ウッコモンとホメオスタシスの絡みもかなりぼかしていたり、デジヴァイスは消えたけど特に問題は無かったり、過去の設定を拾おうと努力はしているけどこの作品の内容と噛み合っていない気がします。

べつのルイが初めての選ばれし子供でなくても、ウッコモンがホメオスタシスと特に関係がなくても、映画全体にデジヴァイスがほとんど登場しなくても、あまり問題なかったんじゃないでしょうか。穿った目で見すぎ?

 

 

そんな矢先に公開された監督のインタビュー

いわく、「後のシリーズへの足かせをなくす」「02最終回でも未来の子ども達はデジヴァイスを持っていない」という2つの意図があるそうです。

こういうインタビューを見て言葉尻を捕らえるのはよくないと思いますが、前者についてはザビギ以降~02最終回までにデジヴァイスを掲げたり進化バンクに映すシーンが描きにくくなるという新たな枷が生じていて、後者は単に手に持っていなかっただけじゃないでしょうか。

いったいどこからどこまでが作中での狙いなのかと純粋に疑問に感じます。

 

 

 

 

一応、監督の狙いは「過去の歴史を改変しない」「いずれ02の最終回に繋がるとファンが思えるのが一番おいしい」という感じらしいです。

 

ここは自分の感性の部分というか、映画の"感想"よりもデジモンアニメシリーズ全体に向けた"意見"です。

自分は面白くなるのであれば歴史を改変してほしいと思っています。

そりゃ、「太一や大輔たちの冒険は間違いだった」とか「実はヤマトとタケルの両親は離婚してなかった」と描写を真っ向から否定される形での歴史改変はノーサンキューなので、度合いにもよりますが……

 

また、02の最終回のことは当時から好きではありません。

2年間続いたシリーズが終わるからか、銀魂で語られたところの最終回発情期(ファイナルファンタジー)を体現するがごとく子供達が全員結婚して同じくらいの時期に子供を作っていて、新しいCPが生えて、クウガネタも交えたりしていて。

「ヤマトが宇宙の敵に対抗するために宇宙飛行士になる」というのもどこまで本気で言っているのかわからなかったです。

全世界の人間にパートナーデジモンができるというのも、放映当時からすれば確かにとても夢のある素敵な話ですが、客観的に見れば新たな混乱が生じかねないのもまた事実。

 

そしてデジモンアドベンチャー:という新たなサーガが出たり、triがなかったことにされだしたりとか、「四聖獣のパートナーはtriの西島世代」「911の時に現地で救助活動をする子供とデジモンがいた」「パートナーとデジモンのどちらかが死ぬともう片方も死ぬ」……など、どこからどこまでが公式なのかわからない設定の数々もあって。

それらを見ていると、リブートをかけるのはやりすぎというか絶対NGなのですが、どうにか再構築できないものかと思ってしまいます。

もうデジモンアドベンチャーというタイトルのついた新作をやらなくていいという気持ちも、同じくらいあります。

 

この項に書いていることのいくらかは角銅さんが事実を明かしてるそうですが、まあ、そのあたりまで交えて感想文書く気には……

 

 

 

キャラについて

無印メンバーが蚊帳の外だったのは02映画として良かったです。

パトカーやヘリでの追跡が入ってたのは無印メンバーの手配だと思ってて、きっと大輔たちは対策会議室みたいなのに連れてかれて、「ウッコモンを処刑せよ」とか言われるように思ってましたが、まあ無くてよかったですね。本当に良かった。

でも、子供達を捕まえたり対話もできてないならパトカーやヘリのシーンは本当になんだったんでしょうか? タケルの天丼やりたかっただけ?

 

幼い太一やヒカリのシーンも、このへんでルイと絡むのかなあと思ってたら、本当に何もなくて笑いました。

大輔があれは太一さんとか言い出すエスパーじゃなくて良かったし、ルイが選ばれし子供マウントを取るわけでもなかったし、客を最も呼び込むエモの塊のようなシーンなのに本当に何もないの面白かったです……

 

 

 

キャラクターは大輔が一番目立ってましたね。彼の前向きさは本作の中で少し誇張気味だった感もあって、もう少し柔軟性が欲しかったような感がありつつも、ストーリーを牽引してくれるキャラは喜ばしいです。

ルイの母親に対しての当たりがきつかったのは部屋の中が見えてなかったからかな、たぶん……?

京も賢ちゃんに矢印向けてるのを描きたかったのか結構いい出番貰ってたような。

デジモンがいなくなったから発言に重みのあるタケル。パソコン室で案の定なことを言うヒカリちゃん。

伊織は……就職してるのか?よくわからない。声が思ってたのと違うけど大人っぽいね。いいね。 

 

 

 

デジモンについて。インペリアルドラモンってもっと大きくなかったっけ?

ビルの間を掻い潜って飛ぶシーンは、「拠点にしてた場所と東京タワーそんなに離れてないんじゃないか? となるとインペ遅くないか?(パイルも)」って気持ちと、「バトル無さすぎて飛行シーンで誤魔化し誤魔化しやってたのでは……?」な気分が入り混ざってました。

昔の自分はインペファイターのことがあんまり好きじゃなかったんですが、今こうして見ると中々にヒロイックでかっこいいよなあと思います。

 

シルフィーモンのトップガンはリキ入っててよかったです。

せっかくの02新作映画だからシルフィーモンとシャッコウモンの進化体出しても良かったのではと思いつつ、この映画で敵の攻撃でダメージ受けてるのエンジェウーモンだけだな……とも思いつつ。

インペが黒色で巨大、シルフィーが白で等身大、シャッコウが白で巨大と3匹並んだ時のバランスがいいなと思えたのは発見でした。

 

 

 

おまとめ

○ デジモン映画の慣習を断ち切った。

○ 久しぶりに02勢をちゃんと見ることができた。

○ 新キャラ2人は悪いようなポジションでない。

× 映画としての満足感はとても低い。

× 過去作の描写を拾っているようで拾えていない、ドラマパートのムードが半端。

 

こんな感じですかね……。

ある程度どんな映画であっても、時間とお金に余裕があれば2回目を見たくなるようなタイプではあるんですが、この映画はちょっとなと思いました。出来が悪いわけじゃないんですが待ちの時間が長くて画面の動きが乏しいのはいかんともしがたいです。